この記事はなぜ人はいじめをするのか①の続きです。
上記の記事では、集団を維持するために個人を犠牲にしてきた、集団維持機能のためにいじめが起きることを説明しました。
そして今からは、脳内物質(ホルモン)⇒オキシトシン、セロトニン、ドーパミンなどがいじめに及ぼす影響をご紹介します。
愛情ホルモン、癒しホルモンと呼ばれている、一見してよい働きをしているホルモンが実は逆にも働くことがあるのです。
よかったら最後までお付き合いください。
いじめは本能
こちらのYouTubeラジオを聞いていてわかったことをまとめていきます。
排他的感情は教育によって正す
イタリアの哲学者ウンベルト・エーコが言った、以下のような言葉があります。

人を差別したり、排他的感情や不寛容であることはそもそも本能の領域であり、教育で正さないといけない
中野氏は、いじめは本能であり、意思ではどうにもならない
そういう(排除する)機能がなければ集団は生き残ってこれなかった、生き延びるための機能だったと指摘します。
仲間を守るなどするために、自分と違うものは排除したり、いじめたりする、
または、やり方を変えてもらわなければ集団のみんなが困るというときに、攻撃してでも手を変えさせようということが、最初の攻撃のきっかけになるといいます。
吹奏楽部でのいじめが多い
例として、「吹奏楽部でのいじめが起きやすい」と尾木ママから情報がありました。
タイミングを合わせるときに、一人だけが目立つ、好き勝手に演奏する、ではみんなが困る。
集団としてうまくやるには、一人だけが勝手に行動するのをやめてもらわないといけない、もしくはできないなら排除をするという事例を紹介していました。
脳内物質(ホルモン)がいじめに与える影響
いじめ、社会的排除とは社会的な機能を高めるために起こるもの。
この社会性といじめの問題を脳科学的な観点から見てみると、脳内物質(ホルモン)にはいじめに関する影響があり、その代表的なものとして、オキシトシン、セロトニン、ドーパミンなどがあります。

オキシトシンがいじめを助長する
たとえばオキシトシンというホルモンは、「愛情ホルモン」と呼ばれ、脳に愛情を感じさせたり、親近感を感じさせる、向社会性を高める働きがあります。
人と人とを結びつけるホルモン
仲間を大切にするときに役立つ
愛情、仲間意識、連帯感をもたらす
集団での社会で欠かせない一方、その逆に恐ろしい側面も含有する。
仲間でない人を攻撃する
仲間を傷つけようとする人を排除する
外れているもの、異物、KYな人を排除する
いじめ、攻撃、排他的感情
また中野氏ご自身の著書、”ヒトは「いじめ」をやめられない”では詳しく脳内物質(ホルモン)のことについて述べられています。
セロトニンの不足により逸脱者の特定が進む
裏切り者検出モジュールに関しては、その①に書いた通り。
日本人は他国の人よりも逸脱者の特定をしやすく、オーバーサンクションが発生しやすい国民性であり、国によって差が出るのはセロトニンという脳内物質が関わっていると中野氏は考える。
日本人は不安症が多い
セロトニンは「安心ホルモン」と呼ばれ、多く分泌されるとリラックスしたり満ち足りた気持ちになり、逆にセロトニンが少ないと不安を感じやすいと言われている。
「セロトニントランスポーター」
と呼ばれるたんぱく質があり、余ってしまったセロトニンをもう一度リサイクルする機能を持っている。
セロトニントランスポーターの量は遺伝的に決まっている。
この量によって人の思考に違いが表れる。
多少リスクがあってもあまり気にせずに楽観的で大らかなふるまいをする
不安傾向が強く、さまざまなリスクを想定して慎重な意思決定をする
セロトニントランスポーターの遺伝子には二つの遺伝子があり、
- L型=Long 多く作る
- S型=Short 少なく作る
遺伝子は2セットであるため、LL型,LS型,SS型の3種に分かれる。
世界29か国で調査した結果、
日本は世界一S型を持つ人が多く、8割以上となった。
アメリカではSは43%、のこりはL型となった。
よって日本人は、
・「慎重・心配性」…先々のリスクを予測し回避しようとする
・「空気を読む」…他人の意見や集団の空気に合わせて行動する
このような人が多くなる傾向にある。
日本人の不安症は江戸時代から?
S型遺伝子の割合
日本:アメリカ = 81% : 43%
どうしてこのような遺伝子の差が開いてしまったのか、
遺伝子が1%変化するには、1世代20年かかると計算して、400年近く前にさかのぼると中野氏は推測します。
日本は災害の多い国であり、江戸時代には噴火、地震、大きな災害がいくつも起こった。こういう被害が起こるときには人は集団で協力しなくては生き残れない。
お米で年貢を納める江戸時代では、稲作は労働集約型の産業であり、総出で足並みをそろえて作業に協力しないとならなかった社会。そういうときにタダ乗りする人間(フリーライダー)は社会的に迷惑な存在だった。
目立たず、リスクに慎重で、裏切り者がいたら糾弾する人のほうが生きやすかった
脳内物質(ホルモン)がいじめに与える影響
ドーパミンによる正義感の快楽
いじめはいけないとわかっていてもやめられない、なぜなら快楽物質が出るからとその①にて説明しました。
ここではもう少し詳しくドーパミンの性質についてシェアします。
快感 > 理性
ドーパミンは快楽物質と言われるホルモン。
快楽の神経は「自分が生きていくために必要なもの」を得るとき活性化され、食事やセックスをするときに放出される。
お腹いっぱいで食べたら太るとわかっているのに食べ過ぎてしまうことは
理性と情動は一致しない、
情動(にともなう快感)は理性を凌駕するということを意味し
いじめはやってはいけないこととはわかっているけれども、理性では止められないということになる。
行き過ぎた正義感
過剰な制裁(オーバーサンクション)が起きるとき、ドーパミンが放出され、脳内では快感を感じることがわかっています。
所属集団=種を守るためにルールに従わないものに罰を与える、
「正義」をもって制裁を与える「正義達成欲求」
所属集団からの「承認欲求」
これらの欲求が満たされる。
いじめの始まりは

間違っている人を正す!
自分は正しいことをしている!
このような気持ちで発生し、いじめる側は絶対正義的な思い込みで得られる快感がある。
そして「正しいことをするのは楽しいことだ」と相手を攻め、批判し、追い込んでいく。
ネット炎上
ネット炎上は匿名性があるためにリベンジのリスクが低く、過激なことを言ってしまいやすい。
炎上すればするほどドーパミンが活性化される。
共同体のルールに従わない人を糾弾することは、正義をもってバッシングする、制裁を与える「正義達成欲求」「承認欲求」が満たされるため、快感を得られる。
・正義を振りかざす
・匿名性によるリベンジの回避
・承認欲求、達成欲求の充足
なぜいじめられる側に原因があるといわれるのか
いじめをしている側は「自分は正義をしている」という無意識の満足があり、正義を行う快感に中毒になっているため、止めることは極めて困難である。
学校でいじめをやめなさいと言われても沈静化せずに、かえって見えにくく潜在化してしまうという例は多々ある。
いじめはいけないとわかっていても、いじめを傍観している人や学校の先生でも、なぜいじめられる側にも原因があると思ってしまうのか。
裏切り者検出モジュール 過剰な制裁(オーバーサンクション)
実は彼らの中には、裏切り者検出モジュールが存在し、過剰な制裁(オーバーサンクション)が発動してしまっている可能性があると中野氏は指摘します。
裏切り者検出モジュールの基準は、いじめる側、いじめを見ている人、さらに担任の先生にもそこまで大きな違いはない。
オーバーサンクションするだけの理由、「これは正しいことをしているのだ!」という正義に対して多くが同調してしまう。抑制の機能が十分に育っていない子供にとってはこのサンクションの発動を止めることは極めて難しい。
まとめ:脳内物質による関与
中野信子さんの意見を通じて、人間の脳の構造的にいじめを止められないことがよく分かりました。
人間の本能として、いじめを止められないならばどうしたらよいのか。
日本に住んでいる者として、みんな同じでないといけないという同調圧力や水面下の陰湿さに対してどうしようもない絶望感すら覚えます。
どこに行っても、何をしても、自分が気づかずにその集団に気に入られない行為をしたり受け入れられない特質を持っているとしたら、いじめは避けられないのではないでしょうか。
この先仮に就職するにしても、どんな集団でもいじめがあるかと思うと、集団の中に入るのすらためらってしまう…
どうして行ったらいいのか、いじめに関して何かいい方法がないか次回考えたいと思います。
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